「いつまで働かなくてはいけないの?」公務員の定年延長に、現役公務員からも悲鳴の声
昨日の日経新聞において「公務員、60歳から賃金7割 定年延長で法案」との記事が掲載された。
これを見たみなさんは、どう思っただろうか。
「また公務員ばかり甘い汁を吸って!」と憤っている方もいるのだろうか。
ところがどっこい、むしろ現役公務員からは悲鳴が上がっている。
定年延長は人手不足の解消とはならない
定年延長は、「少子高齢による人手不足を解消するため」とある。
しかし定年延長をしても人手不足は解消しない。
人手不足が深刻なのは、低賃金で労働環境が良くない業界である。介護業界や飲食業界など、体力的にキツイ割に賃金が低い業界だ。
公務員のような事務仕事は体力的に楽であるし、賃金も悪くない。
非常勤職員を募集すれば、あっと言う間に人が確保できる状況だ。わざわざ現在いるシニア世代に残留してもらう必要などない。
働かないオジサンたちの巣窟
公務員のような事務仕事は体力的に楽であるし、賃金も悪くない。
「やっぱり、定年延長したら得じゃないか!ズルイ!」と思う人もいるかもしれない。しかし、現役公務員の若手~中堅世代からしたら、まったく嬉しくないのである。
なぜか?
それは、職場が「働かないオジサンたちの巣窟」となる未来しか見えないからである。
今でも職場には、たくさんの「働かないオジサンたち」がいる。
コックリコックリ昼寝をしているものや、スマホゲームに興じる者。クチだけ出すが、全く仕事はできない。
部長であっても、かつての先輩だから注意しづらい「働かないオジサンたち」。
それが、さらに5年も居続けるのか・・・。邪魔でしか無い。
先日私が怒った(叱った?)上司も、働かないオジサンである。今日も居眠りばかりしていた。
「働かないオジサンたち」にとっては、定年延長は朗報だろう。
昼寝してれば賃金が貰えるんだし。まったく、クビにしてほしいもんだ。
雇用の安全を重視する日本の法律には、こんな弊害もある。
定年延長は実質的な給与カットにつながる
国家公務員の給与は民間の平均年収よりも高い、と批判を受けることがあるが、国家公務員Ⅰ種(いわゆる官僚)となっているのは東大をはじめとした旧帝大、早慶出身者が多い。
一部上場の大手企業の給与と比べたら、国家公務員の給与は高くない。むしろ、ちょっと低い。アーリーリタイアなんて夢のまた夢だ。
それでも熱意をもって業務にとりくみ、定年までは職務を全うしたいと考える者は多い。
でも、さすがに65歳まで強制的に延長というのは、長い。
今回の法案の概要によると、「60歳までの賃金上昇カーブは抑えて、さらに60歳以降は給与を70%カット。総人件費は同水準」とのことであるから、公務員としては実質的に給与ダウンということになる。
「私は65歳まで働かずに60歳で辞めます」という選択をしたら、生涯年収が下がることになってしまう。
事務次官など、国家公務員としてトップに登り詰めた人にとっては給与減にならないのかもしれない。ただ昔のように天下りを繰り返すほうが退職金も含めて生涯年収は多いと思われる。
「働く」ことは自分で選択しないと意欲が湧かない
定年制度は雇用が守られている安心感があるのは事実だ。
しかし、60歳までを一区切りにして、「まだ働きたい」「他の仕事に挑戦したい」「少しゆっくりしたい」と選択する権利が欲しい。
「まだ働きたい」と自分で選んで働くのならば、意欲が湧くだろう。
“自分で選択した”のか、“上から決められてやる”のか、では、モチベーションが変わってくる。
60歳で定年し、65歳まで再雇用というのであれば、「自分で選択した」という感覚があるだろう。
65歳までが定年では、自分には選択権はないと感じてしまう。
おわりに
非正規で働く方からしたら、「正規で働く人ばかりズルイ」と思われて当然だろう。
一方で、正規で働く人間からしても、「定年延長は勘弁してよ」というのが本音である。
あぁ、雇われはツライよ。
宝くじでも株でも何でもいいから、パーッと儲けたいもんである。